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先天性眼瞼下垂は術後再発しやすい?長期経過について - 元町マリン眼科

  • 執筆者の写真: HASUMI
    HASUMI
  • 7月18日
  • 読了時間: 6分

大人になるまで未治療だった先天性眼瞼下垂の症例


こんにちは!元町マリン眼科です。

生まれつきまぶたが下がってきてしまう「先天性眼瞼下垂」。その中でも、生まれつきまぶたを上げる力が弱い「先天性眼瞼下垂」は重度の場合は、弱視になる可能性があるため、子どもの頃に手術を行います。

しかし、視力に影響がないと判断された例は手術を受けずに成人している方も多くいます。今回はおとなになってから手術を受けた先天眼瞼下垂症の症例を御紹介いたします。※御本人の同意を得て写真を掲載しております。ご協力ありがとうございました!




先天性眼瞼下垂の病態と手術の術式


今回の症例は市民を守るお仕事をしておられる30代の男性の方です。


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先天性眼瞼下垂は、生まれたときから、まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋といいます)の力が弱かったり、筋肉の発達が十分でなかったりする状態です 。そのため、まぶたが瞳孔(黒目)にかぶさってしまい、物が見えにくくなったり、左右の目の大きさが違って見えたりすることがあります。   

まぶたを持ち上げる筋肉が未発達のため、普通の方のように滑らかに瞼が動かせるわけではありませんし、手術をしても筋肉の動きが改善する訳ではありません。そのため、完全に左右対称にするのは不可能です。また手術した方の眼は下を向いたときに瞼が降りてこない(リッドラグといいます)が必発です。

両眼性なら吊り上げ術が適応となりますが、この方は片目だったので眼瞼挙筋群前転術という方法で行うことにしました。


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術直後の様子です。直後は腫れは比較的少ないですが、麻酔が切れてくるとじわじわと出血して翌日のほうが出血や腫れが目立ちます。瞼が動かないので二重はできづらいので、ごく浅い二重にしています。皮膚は切除しなかったのですが、目頭の余剰皮膚が被さる感じで邪魔になりそうだったので、翌日に追加切除をしましょうと提案してみたのですが、よっぽど手術が辛かったのか、帽子を被ったところで「やっぱりやめます」と言われてしまいました。私はちょうどその時、美容皮膚科学会の直後で、重瞼線を作成した後に、頭を起こして皮膚の余剰を確認して座位で切除デザインを決定する、という蘇春堂形成外科の野平先生の講演を拝聴した直後だったので、それをやるべきだったと後悔しました。でもそれは自己満足のためかもしれませんね。



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1週間後の様子です。反対の眼がヘリングでやや下がっていました。右目が大きく感じるとのことでしたが、見た目には左右差がないので様子を見ます。左右差がある眼瞼下垂の方は、術後しばらくは反対の眼が開けづらく感じる人が多いです。しかし、だんだんと慣れていきますのである程度時間をかけて経過をみましょう。


この方は、1ヶ月後の再診時には、腫れもほとんどなく左右差もなく経過良好でした。御本人も心配なことは全く無いとのことでしたので晴れて卒業と致しました。

私としては目頭の皮膚を取っておきたかったのが心残りですが、取りたくなったらまたいつでもお越しください!写真のご協力ありがとうございました。




「再発」はありえるの?どのくらいで?


手術で一度は良くなったまぶたが、また下がってきてしまうことを「再発」と言います。

正直にお伝えすると、先天性眼瞼下垂の場合、大人になってからなる眼瞼下垂(後天性)に比べて、手術後に再発する可能性は残念ながらあると言われています 。これは、先天性の場合、まぶたを上げる筋肉自体が元々弱かったり、成長に伴ってまぶたの状態が変化したりすることが影響するためです 。   


「すぐに再発するの?」というご心配についてですが、再発の時期は様々です。

  • 手術後数ヶ月で変化が見られることもあれば、数年、あるいはもっと長い期間をかけてゆっくりと下がってくることもあります 。   


  • 「必ず再発する」というわけではありませんし、再発したとしても、必ずしも手術前の状態に完全に戻ってしまうわけではありません。


再発しやすさに関わる主な要因としては、以下のようなものがあります。

  • 元々のまぶたの下がり具合やまぶたを上げる筋肉の力:下垂が重度だったり、筋肉の力が非常に弱かったりすると、再発のリスクは高くなる傾向があります 。   


  • お子さんの場合の成長:特に小さなお子さんの場合、体の成長に伴ってまぶたの状態も変わることがあり、それが再発に関係することがあります 。   


  • 手術時の年齢:非常に若い年齢(特に1歳未満など)で手術を受けた場合、再発しやすいという報告もあります。しかし、視力の発達のためには早期の手術が望ましい場合もあります。


長い目で見るとどうなの?再手術はできる?


多くの方は、手術によって長期間良好な状態を保つことができます。しかし、特に先天性眼瞼下垂の場合、生涯にわたって何度か追加の手術が必要になることも珍しくありません 。   


もし再発してしまっても、多くの場合、再手術によって再びまぶたを上げることができます 。ただし、再手術は初回の手術より難易度が上がりますので、経験豊富な医師に相談しましょう。 再手術について詳しく書いた記事も是非御覧ください。  


そのため、手術後も定期的な受診がおすすめです。まぶたの状態や視力などをチェックしてもらい、もし何か変化があれば早めに対応することができます。


元町マリン眼科からのメッセージ


先天性眼瞼下垂の手術は、ご本人にとってもご家族にとっても、大きな決断だと思います。手術後の経過についても、ご不安な点や気になることがあれば、どんな些細なことでも遠慮なく私たちにご相談ください。

元町マリン眼科では、患者様お一人おひとりの状態やライフステージに合わせて、最適な治療法をご提案し、手術後も安心して過ごしていただけるよう、長期的にサポートさせていただきます。


元町マリン眼科の眼瞼下垂手術


元町マリン眼科では、眼瞼下垂の日帰り手術を行っています。眼瞼下垂手術は下垂による症状があり、診断基準を満たせば保険適応での手術が可能です。


  • 瞼が下がって視界が狭い。

  • 上の方や横の方が見にくい。

  • テレビや本を見ていると瞼がつぶれてくるので手で持ち上げている。

  • おでこや頭に力が入って頭痛や肩こりが取れない。

  • 睫毛が被さって見にくい、あるいは睫毛が良く入る。

などが代表的な症状です。眼瞼下垂でお困りの方は、元町マリン眼科へご相談ください。


眼瞼下垂手術について手術の費用:3割負担で両眼で50000円前後、1割、2割負担の方は自己負担上限金額です。また、眼瞼下垂を伴う全身疾患が疑われる場合は初診時に採血を行います。初診料と合わせて6~7千円程度かかります。手術時間は両眼で1時間程度で、局所麻酔下に行います。


ダウンタイム:2~3日はかなりまぶたが腫れます。1週間後に抜糸を行います。内出血は2週間程度で徐々に軽快します。1ヶ月位は朝むくんだり、まぶたが赤いなどの症状が見られることがあります。傷の赤みは半年くらいで徐々に改善していきます。


リスク:出血、痛み、低矯正、再発、創感染、薬剤アレルギーなど、ごくまれに瘢痕形成。


この記事の執筆者


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元町マリン眼科

院長 蓮見由紀子


所属学会・認定医

医学博士

日本眼科学会認定専門医

横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)




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