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ロボット手術と緑内障

院長の蓮見です。元町マリン眼科では、火曜日と金曜日に泌尿器科専門医による泌尿器科外来を行っています。今日は眼科泌尿器科繋がりでトピックを一つ。



泌尿器科手術は、術野である下半身が術者にとって見やすいように頭を下げる体位が取られることがあります。特にロボットを用いた前立腺の手術は気腹と言って、腹腔内にガスを入れて膨らませることと、頭を低くする頭低位の体位を取ることで、術中に眼圧が上がるといわれています。

しかし、緑内障患者に対するロボット手術に対して明確な指針がないという事から、愛媛大学の複数科ワーキンググループが、開放隅角緑内障の患者さんのロボット手術中の眼圧を測定し論文報告しました。(北村ら、日臨麻会誌Vol.37 No.7,743~747,2017)






【方法】

緑内障を合併した患者さん5名は、全員開放隅角緑内障で、初期緑内障であったとの事です。比較検討には非緑内障患者20例が用いられました。また、術前の取り決めで眼圧が40mmHgを超えた場合は手術を中断する取り決めがなされたとの事でした。

患者さんは朝通常通り、いつもの緑内障点眼薬を点眼し、全身静脈麻酔下にダビンチSiシステムを使用して手術が行われました。頭低位は25度、気腹圧は12mmHgで、人工呼吸は従圧式換気で行われたとの事です。

眼圧測定には手持ち式の眼圧計iCare(当院にもあります)で麻酔科医によって測定されました。


【結果】

手術時間は平均250分で、頭低位時間は205分でした。それぞれ、Pre:眼科診察時、T1:麻酔導入前、T2:麻酔導入後、T3:頭低位5分、T4:60分、T5:20分、T6:180分、T7:水平復帰・気腹終了後に眼圧を測定したそうです。

術中に眼圧が40mmHg を超えた症例はなく、全症例で手術は完遂された。眼圧は気腹頭低位で緑内障群、非緑内障群ともに上昇したが、水平復帰・気腹終了後には速やかに低下した。

緑内障群の眼圧の平均値は頭低位120分後に22.1±4.6mmHgと最も高く、症例4では頭低位120分後で右眼が29.4mmHgと、最も高い眼圧だった。

全ての症例で、術後の眼科診察で視力、眼圧、視神経乳頭所見の悪化はみとめなかった。




難しい内容ですが、緑内障というご病気は、年単位で進む病気であって、一時的に眼圧が上昇しても、すぐに視野変化がおこることは通常ありません。

2~3時間の手術の間、眼圧が25~30に上昇したとしても、術後に視力に影響が出るとは考えにくいと思います。

しかし、残存する視野がとても狭い方や、かなり進行した緑内障の患者さんの場合は、高眼圧に対する視神経の脆弱性があると考えられ、今回のような値でも視機能に影響を及ぼす可能性は否定できないかもしれません。その場合は開腹手術などに術式を変更してもらうことなどが提案されます。


しかし、この研究は初期の開放隅角緑内障の方を対象に行われた研究ですので、全ての緑内障の方に当てはまるわけではありません。もし、ご自身が緑内障をお持ちで、ロボット手術を受けることになったら、やはり担当医の先生に確認を取るのがベストと思われます。



以上、ロボット手術と緑内障の意外な関係性についてのブログでした。今日もブログをご覧いただきありがとうございました!




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