蒙古襞にも機能がある⁉️先日の学会発表のご報告
- HASUMI
- 2 日前
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学会参加のご報告
先日、京都で開催された「第12回 日本眼形成再建外科学会」で臨床研究発表を行いました。
今回の研究テーマは「内眥形成術の術式別効果と患者満足度に関する後ろ向き研究」です。
皆様は「内眥形成術(ないしけいせい)」という言葉を聞いたことがありますか?内眥形成術とは一般的には目頭切開と言われている手術です。今回は、この内眥形成術について基本的なことをブログの皆様にわかりやすく解説していくとともに、学会に参加して得た知見について述べたいと思います。

蒙古襞(蒙古襞)について
蒙古襞(もうこひだ)は、目頭にある上まぶたの皮膚の一部が、下まぶたに向かって覆いかぶさっているひだのことです。
簡単に言うと、目頭の白い部分(涙丘と言います)を少し隠しているような状態です。日本人を含むアジア人(いわゆるモンゴロイド系)によく見られる特徴ですが、実は胎児期には全人種にみられるそうです。欧米人では成長による鼻梁の発達により退縮しますが、アジア人は寒冷や環境などの要因で、残っている方が都合が良かったので残っているという説があります。これを自然選択説といいますが、これは科学的な根拠のある説ではなく、あくまでも有力な一説です。
蒙古襞の役割は眼球の保護(だったかもしれない)
蒙古襞が自然選択によって広まったとする説は、主に2つの環境要因への適応として説明されます。
寒冷地への適応説(最も有名)
仮説: 蒙古襞は、最終氷期などにシベリアのような極寒の地で暮らしていた祖先が、強い寒風や凍傷から眼球を保護するために発達したという説です。
根拠とされる特徴:
厚い脂肪層を伴うまぶたが、断熱材のように働き眼球の凍結を防ぐ。
目が細くなることで、雪や氷からの強い光の反射(雪目)や、吹雪にさらされる面積を減らす。
平坦な顔立ちや低い鼻梁(びりょう)といった他の特徴と合わせて、顔面の凍傷リスクを低減させた可能性がある。
紫外線への適応説
仮説: 寒冷地だけでなく、紫外線が強い砂漠や、雪の照り返しが強い地域で、強い日光から目を守るために発達した「日よけ」のような役割を果たしたという説です。
これらの仮説は、蒙古襞を持つ人々が、東アジア、中央アジア、南北アメリカの先住民など、かつて寒冷地や紫外線が強い環境を移動してきた祖先を持つケースが多いことから提唱されています。
こう考えると蒙古襞や分厚い一重まぶたは我々の祖先の眼球を守ってきた大切な器官なのですね。二重になりにくいからって気軽に切ってしまうのは考えものかもしれません。
目頭切開とは?~基本を分かりやすく解説~
目的と効果: 内眥形成術の医学的な適応は、眼裂狭小といって、生まれつき目の幅が狭く、目の開きが悪かったり、逆まつ毛が酷かったりする症例に対して行う手術です。
内眥(ないし:目頭のこと)を覆っている蒙古襞(もうこひだ)を切開し、目の横幅を広げたり、目頭の角度をシャープにしたり、両目のバランスを整えたりする手術です。その同じ手技が、美容の世界では目頭切開として、目が大きくなる、離れ目が近くなる、大人っぽい印象になる、平行型の二重になりやすいなどの効果が期待して行われています。
どのような人に向いているか(一般的な適応): 保険適応で行うかどうかの基準は、目頭の上下に逆まつ毛がある、蒙古襞が発達していて眼が開けづらく、目の幅が狭い(眼裂狭小)、目と目の間が離れて見える方(40ミリ以上で適応)です。離れ目を治したい、平行型二重を希望している方などは美容的な適応となります。
一般的な術式の種類(概略): Z形成、内田法、Park法など、様々な方法があり、患者さんの状態や希望に応じて選択されます。
目頭切開といえばZ形成
蒙古襞の皮膚を小さくZ型に切開し、皮膚を入れ替えることにより突っ張りを解除する方法です。
小さいですが少々傷が残ります。最初は赤黒く目立つ時期がありますが、徐々に目立たなくなります。
皮膚を切除しないので戻すことが可能な手術です。
目頭切開のショート動画(実際の手術動画です。苦手な方はご注意ください)
手術を考える上での一般的な注意点・リスク:
痛み・内出血・腫れ・傷跡の色素沈着や一時的な盛り上がり、稀に瘢痕形成
術後の変化や治癒経過には体質等で個人差があります。
より良い内眥形成術を目指して~私たちの研究視点~
目頭切開が広く行われるようになってきた一方で、「どの術式がどのような結果をもたらし、患者さんがどれだけ満足しているのか」といった点は、まだ十分に解明されていない部分もあります。
今回の研究は「様々な術式がある中で、それぞれの術後の形態的な効果や、何よりも患者さんご自身の満足度がどのように異なるのか」という点に着目しました。患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するためには、こうした客観的なデータと患者さんの主観的な評価の両方を検証していくことが重要だと考えています。今後も、患者さんにより満足していただける医療を目指して、学びと研究を続けてまいります。
今回の詳しい研究内容は、今後追加検討し学会や論文で発表していく予定です。また、この研究は文書にて学会報告へのデータ活用にご同意頂いた方のご協力を得て、まとめさせていただきました。改めて研究にご協力いただきました患者様に深く感謝を述べたいと思います。ご協力誠にありがとうございました。