今日は、プラケニルという薬剤で起こる眼の副作用について解説します。
プラケニルはどんな薬?
プラケニル(ヒドロキシクロロキン)という薬はもともとはマラリアという感染症の薬として開発された薬なのですが、抗炎症作用と免疫調節作用を有することからSLEという病気の薬としても有用なことがわかり、海外ではSLEの治療薬として使われてきました。日本では2015年に承認されて、これまで治療が難しかったSLEの患者さんにも使用できるようになったのは歓迎すべきことです。
しかし、プラケニルの副作用で網膜症を起こすことがあり、治療が遅れると視力障害が残ってしまう可能性があるため、プラケニル投与前と投与中は眼科で副作用のチェックが欠かせません。網膜症を早期に発見することができて、すぐに薬を中止すれば網膜の機能は回復する可能性が高いため、プラケニルを内服している方は定期的な眼科の検診を受けましょう。
SLEとはどんな病気?
全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)は、自己免疫疾患の一種です。SLEでは、免疫システムが自分の体の正常な組織を攻撃してしまうため、全身のさまざまな臓器に炎症や組織損傷が生じます。具体的には、皮膚、関節、腎臓、心臓、肺、脳などが影響を受けることがあります。
SLEの主な症状には以下のようなものがあります:
皮膚症状:頬や鼻に蝶形紅斑と呼ばれる赤い発疹が現れることが多いです。また、日光に敏感になり、日焼けや発疹がひどくなることがあります。
関節痛:関節の腫れや痛みが見られることがあり、特に小さな関節(手首や指の関節など)に影響を与えることが多いです。
疲労感:しばしば強い疲労感や倦怠感を感じることがあります。
内臓の影響:腎臓炎や心膜炎、胸膜炎など、内臓に炎症が起きることがあります。
血液の異常: 貧血や白血球減少、血小板減少などの血液異常が見られることがあります。
SLEの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因、環境要因、ホルモンの影響などが関与していると考えられています。
SLEの治療は、主にリウマチ内科で行われます。免疫抑制剤、抗炎症薬、ステロイドなどが使用され、症状のコントロールや炎症の軽減を目指します。治療は個々の患者の症状や状態に応じて異なりますが、長期にわたるフォローアップが必要です。
プラケニルの目への影響について
プラケニルがなぜ網膜症を起こすのかは完全には解明されていませんが、網膜色素上皮層に薬剤が蓄積して網膜の障害が起こると考えられています。色素上皮はその上にある視細胞の新陳代謝に関わっており、色素上皮が傷んでしまうと、視細胞の新陳代謝が阻害されて視細胞が細胞死に至り、傷んだ部分の視野が欠けてしまうのです。
薬剤の投与は数年に及びますので、薬剤の累積投与量が増えてくると網膜症の発症リスクが高まります。累積投与数が200gを超えると注意開始、1000gを超えたら要注意です。
プラケニルは1錠200mgなので、1日1錠の方は1ヶ月の投与量は6gとなり、33ヶ月で200gですが、2錠の方は16ヶ月くらいで200gとなってしまいます。検診は半年に1回は受けるようにしましょう。
プラケニル内服中の眼科検診の内容
では、眼科検診ではどんな検査をするのでしょうか。プラケニル服用中の患者さんに対する眼科検査のガイドラインがあり、それに沿った検査を行います。
視力
眼圧
細隙灯検査
色覚検査
視野検査
眼底検査
OCT検査
の7項目が必須項目です。当院ではすべて行うことができます。
また、症状に応じて、眼底自発蛍光検査、多局所ERG検査などが追加で行われます。
上記の検査を全て行うためには2時間くらいかかるため、プラケニルの眼科検診は予約制とさせていただいております。または視野検査は後日予約で行います。そのため、内科や皮膚科から紹介状を頂いた時は、余裕を持ってまずはお電話での予約をお願い申し上げます。
本日は目への副作用が起こり得る薬剤についての解説でした。今日もブログを御覧いただきありがとうございました!
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