まぶたのたるみ、もしかして眼瞼下垂?保険適用で手術できる?美容整形後の再手術は保険適応となる?患者さんの疑問を徹底解説
- HASUMI
- 1 日前
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更新日:12 分前

【重要】眼瞼下垂症手術の「保険適用」と「自費診療」の違い
眼瞼下垂症の手術を受けるにあたり、最も気になるのが保険適用の有無だと思います。保険診療と自費診療では、手術の目的や適用される条件が大きく異なります。
手術の目的:病気の治療 vs. 美容目的
保険診療: 保険診療の眼瞼下垂手術は、まぶたが開けにくい、視野が狭いといった「病気」を治療し、視機能や関連症状(頭痛、肩こりなど)を改善することが目的です。これは、国が定めた医療行為として認められています。
自費診療: 自費診療は、「目力を上げたい」「黒目を大きく見せたい」「パッチリとした目になりたい」「二重の幅や形をこだわりたい」「まぶたのたるみを取りたい」など、美容的な見た目の改善や、患者様個人の希望に応じたデザインを追求することが主な目的となります。
保険適用となる主な条件
眼瞼下垂症の手術が保険適用となるためには、いくつかの医学的な条件を満たす必要があります。
診断基準:
一般的に、上まぶたが瞳孔(黒目の中心)の大部分まで下がっている状態が目安となります。
具体的な数値としては、黒目の中心から上まぶたの縁までの距離(MRD1)が2mm以下であれば眼瞼下垂と診断されます。
まぶたを開くのに額の筋肉を必要としている(おでこにシワが寄る)状態も判断基準の一つです。その他、顎挙上の姿勢や上まぶたの凹み(サンケンアイ)、眉毛の挙上の程度なども判断材料となります。
機能障害の程度:
まぶたが開けにくいために日常生活に支障があることが重要です。
まぶたが下がって視野が狭くなっている(視野障害がある)状態は、保険適用の最も重要な条件です。上方視野の欠損角が12度ないしは24%といった定量的評価基準も存在します。
眼瞼下垂に起因する不快症状(頭痛、肩こり、眼精疲労、目の緊張など)がある場合も、医学的必要性が認められます。
医学的必要性:
手術の目的が美容ではなく、あくまで病気や怪我の治療であると医師が判断すること。
その治療法が国や厚生労働省が認めた治療法(医薬品)であること。具体的には、保険適用できる治療法は「挙筋前転法」が規定されており、皮膚を切ることが前提となります。
年齢制限: 眼瞼下垂の保険適用には、年齢による制限はありません。若い方でも、上記の条件を満たせば保険適用で手術を受けることが可能です。
保険適用外となる主なケース
以下のような場合は、原則として保険適用外と診断されることが多いです。
軽度: 視野に影響のないごく軽度の眼瞼下垂は、原則として保険適用外と診断されることがあります。ただし、軽度であっても、物を見る時に眉毛や顎を上げる癖があるなど、視野障害がなくても機能的な問題があると判断されれば、保険適用となる場合もあります。
美容目的: 「目力を上げたい」「黒目を大きくしたい」「パッチリとした目になりたい」など、視野障害がない場合や、見た目の改善が主目的の場合。脂肪をとる、皮膚を取ってきれいな二重を作る、などの細かいデザインをご希望される場合も美容目的となります。
切らない手術: 皮膚を切らない眼瞼下垂術(埋没法や経結膜ミューラー筋タッキングなど)は、保険適用外で自費診療になります。
たるみ取り: まぶたのたるみ取りが主目的の場合(視野に入るほどの重度なたるみでなければ)は、保険適用になりません。
デザインのこだわり: 二重の幅や形、黒目の見え方、左右差など、美容的な希望に応じて細かく調整したい場合は、自由診療の範囲となります。
眼瞼下垂症の診断には上記のようなコンセンサスはありますが、例えば血液検査でこの数字がいくつ以上であるとか、はっきりとした明確な基準がないのです。これは、最終的な判断が個々の医師の臨床経験や見解に委ねられていることを意味します。このため、同じ症状であっても、受診するクリニックや医師によって、眼瞼下垂症の診断や保険適用の可否が異なる可能性があります。
また、今日では保険診療でも見た目のデザインを完全に無視することはありえません。これは、機能回復が主目的であっても、自然な仕上がりを目指すという医師側の配慮によるものです。
保険診療は、片側22,500円程度(3割負担)と、自費診療に比べて費用が大幅に抑えられるという明確なメリットがあります。これは、経済的な負担を軽減したい患者にとって非常に魅力的です。しかし、保険診療の最大の目的はあくまで機能回復であり、術後の美容的な見た目の修正(例えば、二重の幅の調整、左右差の微調整)はできない、あるいは制約があるという側面も存在します。さらに、保険診療では再発した場合の費用がその都度かかるのが当たり前です。また、執刀医を患者側が選択できない場合もあります。一方、自費診療は高額ですが、美容的な見た目に徹底的にこだわり、執刀医を選択でき、中には1年間の修正保証が付帯する場合もあります。患者は、安価な保険診療のメリットだけでなく、美容面での制約や、再手術の際の条件といった側面も理解した上で、自身の優先順位(機能回復が最優先か、美容的満足も同等に重要か)に基づいて治療法を選択する必要があります。このバランスを考慮することが、後悔のない選択につながります。
眼瞼下垂手術:保険適用と自費診療の比較
項目 | 保険適用 | 自費診療 |
手術の目的 | 機能回復(視野改善、眼精疲労・頭痛・肩こり等の症状緩和) | 美容的改善(目力UP、二重形成、たるみ取り、デザインの追求) |
診断基準の目安 | MRD1が2mm以下、視野障害、日常生活に支障がある | 軽度〜重度問わず、美容目的であれば適用可能 |
主な対象 | 視野障害や機能障害を持つ患者 | 美容的な見た目を改善したい患者 |
主な術式 | 挙筋前転法(皮膚を切開する術式が前提) | 切らない術式(埋没法)、レーザーメス手術、デザイン重視の術式など |
費用目安 | 片側約2.5万円 / 両側約5万円(3割負担の場合) | 片側約10〜30万円 / 両側約20〜60万円以上(クリニックによる) |
術後の見た目の調整 | 機能回復が優先。見た目も自然な仕上がりを目指すが、美容的な細かな調整(二重の幅・形、左右差など)は限定的。 | 患者様の希望に応じた二重の幅・形、黒目の見え方、左右差など、細かなデザイン調整が可能。 |
再手術の考え方 | 機能障害が残る場合のみ保険適用を検討。美容目的の修正は対象外。 | 美容目的の修正も可能。多くのクリニックで修正保証期間を設けている場合あり。 |
執刀医の選択 | 原則として選択不可(クリニックの方針による) | 選択可能(クリニックによる) |
修正保証 | なし | あり(クリニックによる、通常1年間など) |
再手術を考えている方へ:保険適用は可能?
一度眼瞼下垂の手術を受けた後に、再度手術を検討される方もいらっしゃるでしょう。特に、美容整形後の再手術や、他院での手術後の修正は、保険適用の判断がより複雑になります。
美容整形後の再手術は原則「自費」となる理由
美容目的で行われた初回の手術は、その目的が「病気の治療」ではないため、当然保険診療の対象外です。美容手術後に、数年経って眼瞼下垂症を発症したとしても、過去の美容手術が原因とみなされるため、病気によるものかの判断が困難であり原則として保険診療では手術できません。二重ラインの左右差や、イメージと異なる仕上がりなど、明らかな美容的な不満による修正手術は、保険診療の対象外です。
ただし、機能障害が強い・医学的必要性がある場合の「例外」について
美容整形後の手術であっても、重度の機能障害が残っている場合や、医学的に再手術の必要性が認められる場合は、例外的に保険適用となる可能性があります。機能障害の具体例としては、目が開きすぎる(過矯正)または開きが不十分(低矯正)で、日常生活に支障がある場合、目を閉じてもまぶたが完全に閉じない(兎眼など)場合、まぶたの開きに明らかな左右差があり、それが視野に影響を与えている場合、目の痛み、頭痛、まぶしさといった初回手術前の症状が改善しない場合などが挙げられます。これらの症状は、単なる美容目的ではなく「疾患の治療」とみなされるため、保険適用となる可能性があります。
他院での保険診療後の再手術も原則「自費」となる背景
多くのクリニックでは、他院で行われた眼瞼下垂手術の修正手術は、保険適用外の「自費診療」とする方針を立てています。
他院での手術後の修正は、前回の手術内容の正確な把握が難しく、また、既に過去の手術による瞼の組織ダメージがあるため、初回手術よりも格段に難易度が上がり、時間も労力もかかる手術です。当院においても他院術後の修正は基本的に自費扱いとさせていただきます。その理由については過去のブログに詳細に書いてありますのでそちらもご参照ください。
「自費は難しい…」そんな時に役立つ「紹介状」の力
眼瞼下垂症の手術費用が自費診療となる場合、経済的な負担は大きくなります。しかし、適切な紹介状があれば、保険適用での治療を検討してもらえる可能性が高まることがあります。
他院での眼瞼下垂症診断に基づく紹介状の重要性
すでに他の眼科や形成外科で眼瞼下垂症と診断されている場合、その診断内容が詳しく記載された紹介状を持参すると、新たに受診するクリニックでの診察が非常にスムーズに進みます。特に、視力検査の結果や、まぶたの開き具合を示すMRD1などの定量的な診断基準が記載されていると、受診先での再検査が不要になる場合があり、患者様の時間的・身体的負担を軽減できます。紹介状は、患者様の症状が「医学的に診断された眼瞼下垂症である」という客観的な証拠となり、保険適用を検討する上で重要な資料となります。
以前手術を受けた病院からの手術内容が記載された紹介状のメリット
再手術を検討する際、以前手術を受けた病院からの「手術内容」が詳しく記載された紹介状は、非常に価値のある情報源となります。新たな執刀医が、前回の術式や、まぶたの状態、手術の具体的な経過などを正確に把握できるため、より適切な修正計画を立てることが可能になります。特に他院での修正手術の場合、前回の情報がなければ、複雑な修正が難しいケースもあります。
紹介状が保険適用検討にどう影響するか
紹介状は、医師が患者の訴える症状を「機能障害」として医学的に評価する上で、客観的な裏付けとなります。これにより、執刀医はより自信を持って保険適用での治療を判断しやすくなります。特に、自費診療が難しいと感じる患者にとって、紹介状は保険適用での治療を検討してもらうための有力な材料となり得ます。ただし、紹介状があれば必ず保険適用になるわけではなく、最終的な判断は受診するクリニックの医師の診断基準と方針によります。紹介状はあくまで「検討を促す材料」であることを理解しておきましょう。
眼瞼下垂の診断基準には最終的には執刀する医師の判断が大きく関与しますが、紹介状は、他院の医師による診断結果や治療履歴という客観的な情報を提供する役割を果たします。
もし、経済的な理由で自費診療が困難な場合は、紹介状の取得は医学的必要性の根拠を強化し、保険適用検討のハードルを下げる可能性があります。また、再手術においては、前回の手術内容の正確な把握が治療の成功に不可欠です。紹介状は、この情報伝達を円滑にし、より安全な手術とより良い結果に役立ちます。したがって、保険適用での再手術を希望している方は、紹介状を単なる事務手続きと捉えるのではなく、自身の症状の医学的根拠を明確にし、適切な治療(特に保険適用)を受けるための重要なツールとして活用すべきです。これにより、医師間の連携がスムーズになり、より質の高い医療を受けられる可能性が高まります。
どこで診断・相談できる?
眼瞼下垂症の診断や治療は、専門的な知識と経験が必要です。ご自身の症状に不安を感じたら、まずは専門医に相談することが大切です。
眼科、形成外科、美容外科それぞれの役割と相談のポイント
眼科: 目の機能や病気に特化した専門科です。眼瞼下垂症の診断や、視機能の改善を目的とした保険診療に強みを持っています。視機能改善目的であることから多くは保険診療で手術を行っています。
形成外科: 体の表面の形態や機能の異常を治療する専門科です。眼瞼下垂症の治療も専門的に行い、保険診療の対象となることが多いです。
美容外科: 主に美容目的の手術を行いますが、眼瞼下垂症の診断や自費診療での治療、他院での修正手術にも対応している場合があります。
まとめ:まぶたの悩みを解決するために
眼瞼下垂症は、多くの方にとって日常生活に影響を及ぼす可能性のある病気です。適切な診断と治療を受けることで、症状が改善し、より快適な生活を送れるようになります。
重要なポイントの再確認
眼瞼下垂症は、見た目の問題だけでなく、視野障害や頭痛・肩こりなどの機能障害を引き起こす「病気」です。
保険適用となるのは、あくまで「病気の治療」が目的の場合であり、機能障害の程度や医学的必要性が重視されます。美容目的の手術は自費診療です。
再手術の場合も、原則自費ですが、強い機能障害が残っている場合は例外的に保険適用が検討されることがあります。この判断は医師に委ねられます。
他院での診断や手術歴がある場合は、紹介状が保険適用の検討をスムーズにする大切な情報源となります。