眉下切開手術で目の形はどう変わる?後悔しないためのシミュレーション
- HASUMI

- 10月22日
- 読了時間: 6分
私はこれまで多くの眉下切開(眉毛下皮膚切除)手術を行ってきましたが、この手術においてデザインが最も重要であり、同時に最も難しいポイントだと痛感しています。
「眉下切開」と聞くと、ただ皮膚を切除するだけと思われがちですが、美しい仕上がりを実現するためには、実に多くの要素を考慮に入れなければなりません。
デザインの難しさ:経験がものを言う要素
眉下切開のデザインを決める際には、少なくとも以下のようなその人その人のお顔立ちによって異なる要素を考慮する必要があります。
個人個人の骨格: 眉骨の位置や突出具合が、たるみの見え方や切開後の自然な仕上がりに影響します。
皮膚の厚み: 皮膚が厚い方と薄い方では、同じ量だけ切除しても、まぶたの引き込み方や手術後の印象が大きく変わります。
眉毛の高さの左右差や眉を挙げるクセ: 左右で眉の高さが違う場合、切除幅を均一にするのではなく、差を考慮したアシンメトリーなデザインが必要です。
眉毛の濃さや形:眉毛が薄い方では傷跡がどうしても目立ってしまいます。また、目尻が薄い、目頭が薄い、眉山が上がっている、など眉の形は千差万別です。一番避けるべきは下がり眉です。
アートメイクの既往: アートメイクのラインを避けるか、含めて切除するかの判断は、傷跡の目立ちにくさや全体的なデザインに直結します。
これらの要素は、教科書的な知識だけでは対応できず、長年の経験と美的センスがなければ、患者さんにとって最適なラインを導き出すことは難しいでしょう。今回は、眉下切開手術を受けられた60代の患者様の治療経過を解説しながら、私が眉下切開で最適な切除量をデザインするために工夫している点についてご紹介します。
※すべての写真は患者様の承諾を得て写真を掲載しております。ご協力誠にありがとうございました!

ご家族が同じ手術を受けられ、ご自身も当てはまる症状が多いとのことでカウンセリングにいらっしゃいました。耳側のまぶたが重く、テープでのシミュレーションで見やすいとのことでしたので眉下切開手術を実施することになりました。

抜糸時の目の腫れは1ヶ月後にずいぶんすっきりしています。まだ少しプクプクしていますが、時間の経過とともにきれいになっていきます。
「やってよかった」とお声をいただき安心しました。もう少し腫れが引いたらアートメイクで傷跡をカモフラージュしたいとお考えのようです。当院では術後のアートメイクも受けていただけます。
後悔を防ぐための「二段階シミュレーション」
手術後の「こんなはずじゃなかった」というリスクを回避し、患者さんに心からご満足いただくために、私は必ず二段階のシミュレーションを行っています。
1. 術前のテープによるシミュレーション

まず、カウンセリング時に眉下とまぶたの皮膚を医療用テープで固定し、たるみが引き上がった状態を鏡で確認していただきます。これにより、手術で得られる効果のイメージと、目の開きがどのくらいになるかを共有します。眉下切開が適応の方はこの時点で必ず「見やすいです」とおっしゃいます。ピンと来ない方には他の手術を勧めることがあります。
2. 手術中の「仮縫い」による最終確認
そして、手術台の上でデザインを決定し切除した後、傷を切開する前に、予定した切開線を糸で仮縫いした状態で、患者さんにいったん起きていただき、鏡でご自身の目の形やまぶたの引き上がり具合をリアルタイムで確認してもらいます。
この段階で確認していただく重要なポイントは、以下ような点です。
目頭のひきつれ(変な縦皺)がないか: 目頭側はたるみが少なく繊細な部分であり、過度に皮膚を引っ張りすぎると、本来ないはずの不自然な縦の皺(ひきつれ、拘縮)が生じるリスクがあります。この「変な縦皺」がないか、目頭周りの皮膚のテンション(張り)が自然であることを、細かくチェックしてもらいます。
ツリ目になっていないか: 眉下切開は目尻側を多めに切除することが多いため、目尻が極端に引き上がり「ツリ目」に見えるリスクがあります。患者さんご自身に目の形を確認してもらい、意図せずツリ目になっていないか、自然で優しい印象が保たれているかを、一緒に確認します。
二重の見え方は自然か:眉下切開を受ける方は奥二重であることが多いです。引っ張りすぎると二重は太く見えますし、切除量が控えめだと奥二重が隠れて挙上効果が少なくなります。鏡で見ながら二重の見え方を調整する大切なステップです。
もちろん、
目が開きやすいか?
左右差は許容範囲か?
目元の印象は希望通りか?
といった点も同時に確認します。
最終的な微調整が必要な場合はこの段階で行い、患者さんご自身の「OK」をいただいてから、切開縫合に移ります。時間と手間のかかるプロセスではありますが、この二段階の徹底した確認作業こそが、患者さんの不安を取り除き、術後に心から満足していただくための私のこだわりです。(この仮縫合は野田実香まぶたのクリニックの野田先生にご教授いただきました。)
これまで数多くの眉下切開を担当させて頂きましたが、この術式一つとってもこれで完成ということはなく、常に変化しています。どんな症例にも学びがあるのが眼形成の素晴らしいところで、この仕事を選んで本当に良かった思って毎日手術をしています。
最近忙しく、ブログの更新が滞っておりますが、楽しみにしてくださっている方には申し訳ございません。いいね!やフォローで励まされ、ブログの執筆が進みますのでブログを応援して下さる方は是非いいね!をよろしくお願い申し上げます。
眼瞼下垂手術について
元町マリン眼科では、眼瞼下垂の日帰り手術を行っています。眼瞼下垂手術は下垂による症状があり、診断基準を満たせば保険適応での手術が可能です。
瞼が下がって視界が狭い。
上の方や横の方が見にくい。
テレビや本を見ていると瞼がつぶれてくるので手で持ち上げている。
おでこや頭に力が入って頭痛や肩こりが取れない。
睫毛が被さって見にくい、あるいは睫毛が良く入る。
などが代表的な症状です。眼瞼下垂でお困りの方は、元町マリン眼科へご相談ください。
手術の費用:3割負担で両眼で50000円前後、1割、2割負担の方は自己負担上限金額です。また、眼瞼下垂を伴う全身疾患が疑われる場合は初診時に採血を行います。初診料と合わせて6~7千円程度かかります。手術時間は両眼で1時間程度で、局所麻酔下に行います。
ダウンタイム:2~3日はかなりまぶたが腫れます。1週間後に抜糸を行います。内出血は2週間程度で徐々に軽快します。1ヶ月位は朝むくんだり、まぶたが赤いなどの症状が見られることがあります。傷の赤みは半年くらいで徐々に改善していきます。
リスク:出血、痛み、低矯正、再発、創感染、薬剤アレルギーなど、ごくまれに瘢痕形成。
この記事の執筆者

元町マリン眼科
院長 蓮見由紀子
所属学会・認定医
医学博士
日本眼科学会認定専門医
横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)


