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白内障手術と術後不適応症候群

最終更新: 10月2日


昨日の水曜日はお昼休みに勉強会をしました。


ドライアイの治療についての勉強会でした。ドライアイについては以前看護師の竹下さんが記事を書いてくれましたね。



ドライアイは患者さんの訴える自覚症状が強いわりに、私達から見る所見が乏しいのでなかなか診断が難しいです。


しかも、多くの場合、出なくなった涙を出すというドライアイに対する根治療法はなく、涙の代わりにヒアルロン酸や人工涙液を補うと言った対症療法となるのです。

なので、点眼をやめると異物感やしょぼしょぼ感が再発してしまいます。


眼の表面に傷があれば診断は明らかですが、多くの患者さんはそこまでに至っておらず(このような状態をサブクリニカルな状態、といいます)しかし、粘膜表面には絨毛の脱落などの変化が起こっているという事です。



ムコスタ点眼というドライアイ治療薬は、目の表面の粘膜を修復する働きがあり、ドライアイのために器質的変化を起こしてしまった結膜や角膜の粘膜上皮細胞を正常な状態に戻すことにより、ドライアイをより健康な状態に戻してくれるという点眼液です。


ムコスタ、という薬は胃薬として有名で、患者さんの中にも内服したことがある人が結構います。胃も粘膜なので粘膜上皮の修復という意味で、作用機序は同じです。


ちょっと苦いのが玉にきずですが、よく効く薬です。



          今回の勉強会のお弁当は萬珍楼でした!豪華~


この薬によって、私が以前困った症例も助けられたことがあります。


70代の女性でしたが、白内障で両眼0.3くらいに視力が低下していたので、白内障手術をしました。最初に行った左眼は視力は1.2に回復して患者さんは明るくなって喜びましたが、術後ごろごろする、と言っておられました。


白内障手術は痛くもかゆくもない、という方が多いのですが、やはり手術ですので、他所嚢痛みやゴロゴロ、目が赤くなる、などは当然起こります。


「大体は1週間くらいでよくなるので、様子を見ましょう」とお話ししました。


1週間たってもゴロゴロは続いていたようで、ヒアルロン酸の点眼を出しました。つけると少しマシになるといっていました。


1か月たって反対眼を手術しました。視力は1.2に回復して、患者さんは喜びましたが、右はあまり痛くなかったようでした。


両眼とも術後経過は良好でしたが、左のゴロゴロは1か月以上たっても改善せず、毎週の診察の度に、左の不調を強く訴えました。手術は失敗なく、視力は回復している。同じ手術をしていても、経過は左右で違うことはよくある。特に傷があるわけでもないので時間とともに改善する、と説明を繰り返しました。

様々な点眼を試しましたが、どれも納得する改善がありませんでした。


とうとうある日、予約外でいらして「右は何ともないのに、左はずっと異物感がある、時々鋭い痛みもある。ずっと気になって仕方がないので、左は眼内レンズが変なところに入ったのではないか、取り出して欲しい」とおっしゃいました。


私は大変困りました。手術ははた目にはとてもうまくいっています。

ピントは狙った通りですし、感染もなく、傷の治りも問題ありません。視力も翌日から回復しており、ほとんどの患者さんは喜ぶ手術です。


白内障手術で使う人工レンズは小さい傷から折りたたんで入れます。眼の中で広がったレンズを取り出すのは大変危険な手術ですし、ゴロゴロするから取り出した、なんて聞いたことありません。何よりレンズがないと、患者さんはピントが合いませんので、見えなくなります。


私は患者さんに「眼の中には痛みを感じる細胞がないので、眼の中のレンズがゴロゴロいたいと言う事はあり得ない。最後にこの薬を試して欲しい、これが効かなかったら来週相談しましょう。」と言ってムコスタ点眼を出しました。


1週間後の診察で患者さんは、手術後初めて安堵の表情で「先生、あの薬で楽になりました」とおっしゃってくださいました。


以降、私は術後の痛みを伴うゴロゴロにはムコスタ点眼を処方するようにしています。

印象としては、自覚症状としての痛みや不快感が強いタイプに聞くと思われます。



後にこの症例について、深く調べたところ、術後不適応症候群という疾患に当てはまると思いました。皆さんは術後不適応症候群、という言葉を聞いたことはないと思います。


手術というイベントは、多くの患者にとって身体的、精神的なストレスを大きく与えます。また、手術後は肉体的に大きな変化が起こります。その変化を受け入れられない状態が術後不適応症候群、なのです。


白内障はお歳をとれば誰でもなる白髪のような病気です。手術は10分で終わりますし、痛みもほとんどない手術です。故に、我々医療従事者も知らず知らずのうちに、たくさんあるうちの一つ、としてしまっているのかもしれません。


しかし患者さんにとっては大事な目を切る手術、一生に一度の大事なのだ、と改めて気づかせてくれた症例でした。



以上長文になりましたが、読んでくださってありがとうございました✨



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