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物が二重に見える…それって「上斜筋麻痺」かも?

  • 執筆者の写真: HASUMI
    HASUMI
  • 4 日前
  • 読了時間: 5分

「物がダブって見える」「右側(左側)を向くとずれる」それは複視という症状です。その原因の一つに「上斜筋麻痺(じょうしゃきんまひ)」という病気があります。本日はこの病気について解説していきます。


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眼球を動かす6つの筋肉と神経支配


人間の眼球は、6つの筋肉に囲まれていて、この筋肉たちが協調して動くことで、上下左右、ななめ、そして回転といった複雑な動きが可能になります。これらの筋肉は「外眼筋」と呼ばれます。2つの眼球の動きが合ってない、例えばどちらかの眼筋の一部に麻痺があればその方向を向いた時に左右の眼がズレて、物がダブって見える「複視」という症状が起こるのです。



1. 上下方向の動き


  • 上直筋(じょうちょくきん):眼球をに動かします。

    • 支配神経:動眼神経

  • 下直筋(かちょくきん):眼球をに動かします。

    • 支配神経:動眼神経


2. 水平方向の動き


  • 内直筋(ないちょくきん):眼球を内側(鼻側)に動かします。

    • 支配神経:動眼神経

  • 外直筋(がいちょくきん):眼球を外側(耳側)に動かします。

    • 支配神経:外転神経


3. 斜め方向・回旋の動き


  • 上斜筋(じょうしゃきん):眼球をに動かすとともに、内側に回旋させます。

    • 支配神経:滑車神経

  • 下斜筋(かしゃきん):眼球をに動かすとともに、外側に回旋させます。

    • 支配神経:動眼神経


Googleが提供してくれた外眼筋の画像
Googleが提供してくれた外眼筋の画像

上斜筋麻痺と神経の関係


今回のテーマである「上斜筋麻痺」は、この6つの筋肉のうち、上斜筋だけを支配している「滑車神経」の異常によって起こります。

滑車神経は、他の多くの筋肉を動かす動眼神経とは異なり、上斜筋というたった一つの筋肉だけを担当しています。このため、滑車神経に問題が起きると、上斜筋のみが機能しなくなり、特徴的な上下斜視の症状が現れるのです。

動眼神経は複数の筋肉を動かすため、麻痺が起きると、眼が上下左右に大きくずれ、まぶたが下がるといった複数の症状が一度に現れることが多いです。それに対して、上斜筋麻痺は症状が比較的限定的なのが特徴です。


💡豆知識:外転神経麻痺って何が違うの?


上斜筋麻痺は、眼球を動かす神経の病気の一つですが、同じように物が二重に見える病気として「外転神経麻痺」があります。

外転神経は、眼球を外側に動かす「外直筋」を支配しています。この神経が麻痺すると、眼が内側(鼻側)にずれてしまい、物を横に見たときに特に二重に見えるようになります。

上斜筋麻痺と外転神経麻痺は、どちらも物が二重に見えるという共通の症状がありますが、見分け方があります。外転神経麻痺は水平にダブって見えるのに対して、上斜筋麻痺は垂直にタブって見えるのが特徴です。原因はどちらも同じような血管性が多いと言われていますが、頻度的には上斜筋麻痺のほうが多いようです。



上斜筋麻痺を疑う3つのサイン


  • サイン1:二重に見える(複視)

    • 特に上下にずれて二重に見えるのが特徴です。また、向く方向によってずれがひどくなったりするのも特徴的です。

  • サイン2:顔を傾ける癖がある

    • 無意識に、首を横に傾けていることに気づいたら要注意です。これは、二重に見えるのを解消しようとする「代償性頭位」という行動です。

  • サイン3:階段や坂道を降りるのが怖い

    • 片眼で見た方が安全に感じる、段差が分かりにくい、といった症状もよく見られます。


上斜筋麻痺の原因:最も多いのは血管性


最も多い原因:血管性:特に中高年の方に多いのが、高血圧や糖尿病、喫煙などによる「微小血管性虚血(びしょうけっかんせいきょけつ)」です。眼を動かす神経に血流障害が起こることで麻痺が起きます。

その他の原因

頭部外傷:転倒などで頭を強く打った後に発症することがあります。

先天性:生まれつきの麻痺が、大人になってから症状として現れるケースもあります。

稀な病気:脳腫瘍や重症筋無力症など、他の病気が隠れている可能性もあります。


診断と治療


診断の流れ:専門医による「パークスの3ステップテスト」や眼位測定を行い、眼球運動の異常が確認されれば、ヘス赤緑チャートによる麻痺筋の同定を行います。

頭蓋内疾患の否定:MRIなどの精密検査で原因を特定します。


治療の選択肢

基本的には改善が見込める数カ月は内服などで保存的治療を行います。数ヶ月が経ち、症状が固定して斜視が残存したら他の治療を検討します。

  • 自然治癒を待つ:血管性の麻痺の場合、数ヶ月で自然に改善することが期待できます。

  • プリズム眼鏡:複視を軽減するために、特殊なレンズの眼鏡を処方します。

  • 手術:保存的治療で改善しない場合、眼球の向きを調整する手術を検討します。


おわりに:もし心当たりがあれば、まずは眼科へ


今回のブログで挙げた症状に心当たりがある方は、自己判断せず、お近くの眼科にご相談ください。

早期に原因を特定し、適切な治療を行うことが大切です。

元町マリン眼科は、複数の視能訓練士が在籍しており、斜視の専門的な検査を行うことができます。手術は行っておりませんが、手術が必要な方は専門施設をご紹介することができます。

斜視の症状が気になったらまずはご相談ください!



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