急性発症の片側眼瞼下垂の意外な原因
- HASUMI

- 8月25日
- 読了時間: 4分
急性発症する片側の眼瞼下垂の原因として、顔面神経麻痺が考えられます。
顔の表情を作っている筋肉(表情筋)を動かしているのが顔面神経です。顔面神経は脳と表情筋や唾液腺などの器官をつないでいる神経ですが、このどこかに麻痺をきたすのが顔面神経麻痺です。
「急に片側の顔が動かなくなった」
「まぶたが閉じにくい」
「うまく笑えない」
「食べ物や飲み物がこぼれる」
もし、上記のような異変を感じたら、それは「顔面神経麻痺」かもしれません。特に70歳以上の方の場合、その原因や治療には、特別な注意が必要です。
今回は、高齢者の顔面神経麻痺について解説していきます。
顔面神経麻痺には中枢性と末梢性がある
顔面神経麻痺には、大きく分けて2つのタイプがあります。
中枢性麻痺: 脳出血や脳梗塞など、脳の病気が原因のもの。緊急性が高く、一刻を争う場合があります。
末梢性麻痺: 顔面神経そのものに障害が起きたもの。ウイルスなどが原因で、顔面神経麻痺の9割以上を占めます。
どちらのタイプか見分けるための最も簡単な方法は、「おでこにシワを寄せられるか?」です。
末梢性麻痺では、顔の片側全体(おでこから口元まで)が動かなくなります。しかし、中枢性麻痺の場合、脳の神経の仕組み上、おでこだけは動かせる場合が多いようです。
ですが確実には、すぐに脳神経外科を受診し、画像診断を行って緊急性の高い脳の病気を否定しておくことが重要です。
原因の多くはヘルペスウイルスが原因
脳の病気が除外されたら、次に疑われるのが9割以上を占める「末梢性麻痺」です。その原因の多くはウイルスで、特に以下の2つが代表的です。
ベル麻痺: 単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因と考えられています。
ラムゼイハント症候群: 帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で、顔面麻痺に加えて耳の痛みや水ぶくれ、耳鳴りなどを伴うことがあります。
この「ラムゼイハント症候群」は、特に高齢者で発症率が高い病気です。ベル麻痺に比べて治りにくく、後遺症が残りやすい傾向があるため、耳の周りの症状がないか、よく注意して観察することが大切です 。脳の病気が否定されたら耳鼻咽喉科を早めに受診して耳の症状がないかどうかを詳細に調べてもらいます。
治療の「ゴールデンタイム」と高齢者ならではの注意点
顔面神経麻痺の治療は、発症から3〜5日以内が勝負の「ゴールデンタイム」です。この時期に治療を開始できれば、麻痺の回復率が大きく向上します。
治療の中心は、炎症を抑える「ステロイド」と、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」です。特にラムゼイハント症候群の場合は、両方を併用するのが一般的です。
しかし、高齢の方、特に糖尿病や腎臓の病気をお持ちの方は、注意が必要です。ステロイドには血糖値を上昇させる、胃が荒れる、骨がもろくなるなど多くの副作用があるため、全身状態に注意しながら治療することが大切です。
また、麻痺によってまぶたが完全に閉じなくなる「兎眼(とがん)」は、目が乾いて角膜を傷つけ、視力低下につながるリスクがあります 。薬の治療と並行して、人工涙液や眼軟膏を使い、夜は眼帯で保護するなど、目のケアを怠らないようにしましょう。
当院でも兎眼の治療は行っております。まずはドライアイの治療を行い、症状が固定する時期に涙点閉鎖術や眼瞼下垂症や兎眼の改善目的に手術を行うことがあります。
まとめ:顔面神経麻痺を疑ったらまずは耳鼻咽喉科または脳神経内科を受診しましょう
急に発症した眼瞼下垂には顔面神経麻痺が隠れていることがあります。
顔面神経麻痺は、原因によって緊急性が異なります。脳の病気が原因である可能性も考慮し、まずは頭の中を確認することが重要です。脳の病気が疑われる場合は脳神経外科や脳神経内科、それ以外の末梢性の麻痺であれば耳鼻咽喉科が専門となります。いずれにせよ、発症から3〜5日以内が治療の「ゴールデンタイム」であるため、できるだけ早く専門医を受診することが、最大の回復を得るための鍵となります。
また、7月より横浜市では高齢者の帯状疱疹ワクチン接種が助成されることになりました。
当院でも接種を行っております。接種は予約制で、お電話またはネットからご予約できます。65歳以上が補助の対象ですが、65歳未満の方でも接種は受けられます。特に50歳前後から帯状疱疹の発症リスクは高まりますので早めの接種がおすすめです。詳しくはブログ記事を御覧ください!



