眼窩疾患シンポジウムで発表しました
- HASUMI

- 10月27日
- 読了時間: 4分
10月25日は私はお休みを頂いて、第39回眼窩疾患シンポジウムに参加してきました。今回は横浜市立大学形成外科の小久保先生が学会長を務められ、マリン眼科から徒歩10分のかながわ労働プラザで開催されました。おそらく全出席者の中で私が一番近くからの参加であったと思われます。
今回は私が発表した内容と、そもそも眼窩って何?について解説したいと思います。
「眼窩(がんか)」とは?
眼窩とは、眼球(めだま)が入っている頭蓋骨のくぼみ・骨の部屋のことです。
頭蓋骨の目の部分は空洞になっていますが、この骨の空洞の中に、眼球だけでなく、様々な重要な組織が詰まっています。
眼窩に詰まっている大切な組織
眼球:視覚の要となる「めだま」そのものです。
視神経:目で見た情報を脳へ伝える、非常に大切な神経です。
外眼筋:眼球を上下左右に動かすための6本の筋肉です。
脂肪:眼球を衝撃から守り、位置を安定させるクッション材です。
血管や涙腺:目の組織に栄養を届けたり、涙を作ったりする組織です。
眼瞼:もちろん瞼は大切な眼球の蓋ですよね。
このように、眼窩は私たちの「視る」という機能、そして目の見た目を保つ上で、とても複雑で重要な構造が集まっている場所なのです。
眼窩の病気で起こりうる症状
この眼窩の中で、腫瘍(できもの)ができたり、炎症が起こったり、骨折したりすると、以下のような症状が出ることがあります。
眼球突出:目が前に飛び出てくる、顔の見た目の変化
複視:ものが二重に見える(外眼筋の動きが悪くなるため)
視力低下・失明:視神経が圧迫されたり、炎症を起こしたりするため
眼窩の中は、体の表面からは見えない場所です。そのため、症状が出て気づいた時には病気が進行していることもあります。眼窩疾患の鑑別ためには画像診断が重要です。
シンポジウムで発表した甲状腺眼症について
私の今回の発表は、甲状腺眼症(Thyroid Eye Disease:TED)の治療経験について報告しました。
TEDとは?
TEDは、甲状腺機能の異常(バセドウ病など)に伴って、免疫の異常が目の周りにも波及してしまう病気です。バセドウ病が圧倒的に多いですが、稀に橋本病でも起こり得ます。眼窩の中の脂肪や筋肉が炎症を起こして腫れてしまうことで、様々な症状が現れます。
TEDでよく見られる症状
眼球突出:眼窩の脂肪や筋肉が腫れて増えるため、目が押し出されて飛び出します。
複視:眼球を動かす筋肉が腫れて硬くなり、目の動きが悪くなることで、ものが二重に見えます。
眼瞼後退:まぶたが吊り上がったようになり、目が大きく見えすぎます。
私の発表のポイント
私が報告したのは、眼瞼下垂症が最初の入口だった症例で、甲状腺機能異常が見つかりバセドウ病の治療を開始する事になった症例です。眼球突出やまぶたの開大がきっかけになることが多いため、眼瞼下垂症が主訴となることは珍しいかなと思いました。
本症例でポイントになったのは以下の点でした。
「眼瞼下垂の精査からバセドウ病が見つかり全身加療に至った」
「まぶたの腫れを改善するために、当院で工夫しているステロイド注射手技」
「体重増加によってTEDの悪化が見られたこと」
「ステロイド注射によって消炎はある程度効果があったものの、TEDによる構造的な変化は残存し、最終的には外科的介入が必要であったこと」
こうした報告は、他の先生方と知識や経験を共有し、今後のより良い治療法を探るために非常に重要です。今回の発表を通じて、参加された多くの専門医と活発な議論を交わし、私自身も大変勉強になりました。
さいごに
「眼窩」の病気は、目に直接関係するだけでなく、見た目(顔貌)や心の健康(QOL)にも大きく影響します。特に甲状腺眼症は若い女性がバセドウ病になりやすいこともあり、見た目の問題は非常に重要です。最近話題の分子標的薬、テッペーザの効果も気になるところです。
今回のシンポジウムでの学びを、日々の診療に活かし、これからも一人でも多くの患者さんの目の健康と笑顔を守れるよう、努めてまいります。少し難しい内容でしたが、ここまでお読み頂きありがとうございました。
おまけ
私の恩師でもあり、日本眼形成界の重鎮である野田実香先生がマリン眼科を見学に来てくださいました!当院の2台目のIPLはみか先生からお譲りいただいたものです。みか先生もM22との再会を喜んでいらっしゃいました❣


