斜視の新しい治療、ボツリヌス毒素注射について
更新日:2020年8月20日
ものが二つに見えることを複視といいます。
複視には片目で見た時の複視(単眼複視)と両目で見た時の複視(両眼複視)があります。
両眼複視の原因は、右目と左目の向きや動きが揃っていないことが原因で、斜視や神経麻痺による眼球運動障害などがあります。
斜視があると、ものが二つに見えるので非常に生活に支障をきたします。また、小さなお子さんに斜視があると、優位でない側の眼の視覚刺激を脳から消してしまい(抑制)、使わない方の眼が弱視になってしまうことがあります。
また、ものが立体的に見えるためには両方の眼を使うことが必要ですが、斜視があると、立体視という機能が育たない事があります。
目が寄っているな、とか、写真を撮って眼の位置がおかしいと思ったら、早めに相談することが必要です。
斜視のタイプによっては、様子を見ているだけでよいものもあります。
また、遠視の眼鏡で治る斜視もあります。
プリズム眼鏡という特殊な眼鏡で支障なく過ごせることもあります。
上記のような治療でも、まだ問題が残る場合、手術という選択肢もあるのですが、最近、斜視に対するA型ボツリヌス毒素注射が斜視の治療として認可されました。
ボツリヌス毒素、とはいわゆる皺をとったりするボトックス注射のことです。筋弛緩作用があります。注射なのでいずれ効果は切れてなくなりますが、外眼筋を切って縫ったりする手術よりははるかに侵襲も少なく、患者さんの負担も少ないとおもいます。ただし、斜視の種類によっては効きにくいタイプもあるようです。
患者さんにとっては、どんな小さな手術であっても手術は怖いものです。手術の代わりとなりうるボツリヌス毒素の注射で、複視に悩む患者さんが一人でも救われたらと思います。
以上、今月の日眼会誌からでした。